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感想・レビュー

1. 山根和典

   2025年10月9日

   これは掘り出し物の傑作でした。素晴らしかったです。

   原作・脚本はジョン・アーヴィングの『ガープの世界』、監督はラッセ・ハルストレム（『ギルバート・グレイプ』）という組み合わせ。孤児院で生まれた青年が、数々の経験を通じて成長していく物語です。

   劇中、登場人物は予想外の不条理に見舞われますが、作品全体はダークさよりも温かな血の通った優しさをたたえています。その余韻は心の奥にじんわり染み、ラッセ・ハルストレム監督の手腕による人肌の温もりと呼べる感触をもたらします。私自身は『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』にも通じるこの余韻が特に印象的で、本作の方が好みでした。

   登場人物は誰もが不完全で矛盾を抱えながら生きていますが、作品が強く訴えるテーマは、未熟さを包み込む赦しだと感じます。展開の一部は観る者に重い問いを投げかけますが、それを越えて心に残る考察の多い名作です。

2. 山嵐

   2025年10月8日

   アカデミー賞を2部門受賞した作品。孤児院で育ったホーマー・ウェルズを主人公に、医師としての道を模索する彼が孤児院を出てからの出来事や、その後の孤児院の様子が描かれています。ストレートな人間ドラマの印象が強く、物語の展開は王道を行っていますが、特に目新しさや独自性は感じられません。ただし、スムーズに進行するため観やすさは抜群です。海を見たこともないホーマーが「サイダーハウス」での経験を通じてさまざまなことを学び、恋をし、医師として成長し、最後には孤児院に戻ってくるストーリーです。彼には新たな人生を歩んでほしかった思いもありましたが、綺麗な展開にそれほど気にはなりませんでした。ラーチの少し頑固ながらも親心の強いキャラクターが描かれ、マイケル・ケインの演技は圧巻です。強いて言えば、ヒロインのキャンディ（シャーリーズ・セロン）が40年代の設定の影響か、非常に王道なキャラクターで少々共感が得にくかったかもしれません。驚くことに、この作品でトビー・マグワイアとJ・K・シモンズが「スパイダーマン」より前に共演していたこともあります。孤児院の男の子はマコーレ・カルキンではなく弟のキーランでした。ホーマーが孤児院の仲間たちに愛されている様子がしっかり伝わり、心温まる作品とも言えるでしょう。

3. リョウジ

   2025年9月30日

   なぜこのタイトルなのか、観ている間は疑問に思った。
   観終えた後、少しずつその意味が見えてくる。

   海を知り、恋を知り、不条理を理解する。
   正解はどこにも存在しない。
   自らの道を選ぶ覚悟を持った青年と、
   彼を深く愛し願う医師の物語。

4. ザク

   2025年9月25日

   こういう映画が大好きなので、この作品も予想通り楽しめました。ただ、予想以上にテーマが多く、どれも重い内容で驚きました。それでも作品には温かさが感じられ、主人公ホーマーの人柄が観る者の心を温かくしてくれるのだと感じました。
   JKシモンズが出演していたとは思わず、驚きと同時に笑ってしまいました。スパイダーマンを連想しました。

   脚本
   孤児院で育ったホーマーが故郷を離れるのは確かに勇気が要る。故郷を出てからの不便さや有り難さに気づき、さまざまな経験を経て、最終的にホーマーが孤児院へ帰る決断を下す。生まれ育ちは関係なく、愛着を抱く場所が人を成長させるのだと知りました。周囲の大人や子供たちの態度から、ホーマーがいかに多くの人に愛されていたかが伝わってきます。戻ってきたときの皆の喜ぶ姿は、切なくも愛おしく、こちらまで笑顔になりました。

   ただ、ホーマーがキャンディと恋に落ち、一線を越えてしまう展開については、彼自身が抑制してほしかったという気持ちが強かったです。キャンディからのアプローチがあれば納得できたのですが、二人の関係はあっさりと進んでしまい、少し違和感を覚えました。また、ホーマーが孤児院を出る動機がキャンディに関係するものだったのかもしれないと感じつつも、ウォーリーに心を動かされたように見える場面もあり、動機をもう少し分かりやすく描いてほしかったです。キャンディに心を動かされたことが自然な動機として受け止められる場面もあったように思います。

   リンゴ農園での働き手としてローズ一家との関係が進む中、ローズとローズの娘ローズ・ローズが近親関係にあるという展開には驚かされました。父親ローズの視線が怖く感じる瞬間もあり、過去の時代にはこうした事例が多かったのかもしれないと考えさせられました。助けたいのに助けられないモヤモヤ感が残り、他の従業員がローズの変化ゆえに介入できない理由もよく伝わってきました。

   体が弱かったファジーが亡くなり、養子縁組のために嘘をつく場面には胸が痛みます。みんなが「おやすみファジー」とささやく中、ドアのそばでラーチ医師が泣く姿は特に刺さりました。子供たちのことを思っての嘘なのかもしれませんが、それでも亡くなること自体を隠すのはつらいことです。日本の子供病院でも、亡くなった事実を隠すために「元気になって退院した」と伝えることがあると聞きます。

   温かな場面だけでなく、作品には闇の側面も描かれており、ホーマーがさまざまな人と関わっていくサブプロットも非常に興味深かったです。子供たちとの場面は多くはないものの、彼らとの関係性は伝わってきます。結末は、キャンディと結ばれるのかと期待させつつも結ばれず、ウォーリーが車いすの状態で帰ってくるシーンで幕を閉じます。キャンディとの物語はあくまで一つのエピソードに過ぎず、無理に続きを描くよりも、この終わり方の余韻が作品の魅力を高めていると思います。

   映像と音楽
   田舎の景色が美しく、心が穏やかになります。重いテーマを扱いながらも、陰鬱さはほどほどで、観やすさがあります。音楽が特に素晴らしく、テーマ曲が一曲だけでも流れる瞬間が心を動かします。曲自体は非常に良いのですが、他の作品と雰囲気が似ていると感じる瞬間もありました。

   総括
   思わぬキャストの豪華さにも驚かされました。キーラン・カルキンの出演も印象的で、作品全体のクオリティは高いと感じます。ただし名作の伝説級とまでは言えず、より多くの人に観てもらいたい作品です。土地や家、場所ごとに異なるルールに順応していく難しさと、それに抗い自分で判断する勇気の大切さを教えてくれる、見応えのある作品でした。2025年、89本目の鑑賞作。

5. 小さな森

   2025年9月20日

   心温まる瞬間。
   トビー・マグワイアとJ.K.シモンズが同じ画面に共演すると、観客はついスパイダーマンを連想してしまう。

6. 工房の庭

   2025年9月13日

   原作・脚色をジョン・アーヴィングが手掛け、ラッセ・ハルストレムが監督した作品。孤児院で育った青年が、初めて外の世界に出てサイダーハウス（林檎農園）で働き始める。その場所には厳格なルールが存在し、彼は外に連れ出してくれた女性との恋に落ちる。彼の日常を描いたこの物語は、一見静かな生活のようでありながら、不安が常に漂う日々を描写している。農園と孤児院、どちらが主人公ホーマーの真の居場所なのか。

7. nanasi

   2025年9月10日

   心温まるヒューマンドラマの傑作『サイダーハウス・ルール』は、ジョン・アーヴィングの同名小説を原作とする映画で、観る者の心を深く揺さぶる作品です。閉ざされた孤児院の世界で育つ少年ホーマーが、外の世界へ飛び出し、自分の居場所を見つけていく過程を、素朴で温かな人間関係を通じて描きます。

   善良な人々が紡ぐ物語: 登場人物は誰も完璧ではありません。孤児院の院長ラーチ医師は、社会的には許されない中絶手術を行いながらも、孤児たちを深い愛情で包む善良な両親のような存在です。主人公ホーマーは、優しさゆえに決断を迷い葛藤します。リンゴ園の娘キャンディは、美しくも愛と孤独の間で揺れる複雑な女性です。彼らの不完全さこそが人間らしさを際立たせ、互いに支え合う姿は観客の心に温かな余韻を残します。

   旅と成長: ホーマーが育ったルールで縛られた世界から、リンゴ園という新しい自由な世界へと心が飛び出す冒険を描く物語。さまざまな経験を通して、彼は本当に居心地の良い場所と、人生をどう生きるべきかを見つけていきます。

   クライマックスとメッセージ: 映画の終盤、ホーマーが選ぶ道は成長の象徴です。用意されたレールではなく、自らの意思で人生を歩み始める決断こそが、本当の冒険の始まりです。

   最高のキャストと演技: 主演のトビー・マグワイアが繊細な演技で葛藤する青年像を見事に表現。アカデミー助演男優賞を受賞したマイケル・ケイン演じるラーチ医師と、シャーリーズ・セロン演じる美しくも儚いキャンディが、物語に深みと感動を添えます。

   まとめ: 『サイダーハウス・ルール』は、人生の選択、家族の在り方、倫理観について深く考えさせる心温まる傑作です。不完全さを抱えた人々が織り成す、愛おしくも力強い物語を、ぜひご覧ください。

8. 田貫

   2025年8月29日

   感動的な作品！

   物語はかなり重たいテーマを扱っていますが、同時に心温まる要素があり、人々の愛情が強く感じられる映画です。ホーマー（T・マグワイア）に寄せるラーチ先生（M・ケイン）の愛、ウォリー（Ｐ・ラッド）やホーマーに対するキャンディ（Ｃ・セロン）の思いやり、そして孤児院の子どもたちの優しい笑顔が印象的です。さらに、デルロイ・リンドがミスター・ローズ役で素晴らしい演技を披露しています。

9. へっぽこライダー

   2025年8月21日

   初めてこの映画を観たのはいつだったか小学生の頃に何度か見たと思うが、その頃はただワクワクするばかりで、時代背景や子供たちの状況を考える余裕はなかった。大人になってからこそ、この映画の真の素晴らしさに気づいた。主人公ホーマーは孤児院で育ったため、海や恋愛、映画についてもほとんど知らなかった。しかし、そんな世間知らずの彼だからこそ、ローズは救われることになったのだろう。1940年代には近親相姦が隠蔽されていた時代で、周囲の季節労働者たちは何かに気づいていたはずだが、ホーマーとキャンディはその一歩を踏み出し、ミスターローズやローズ、そして他の労働者たちを苦悩から救った。この映画の素晴らしさは、これだけにとどまらず、様々な人生模様がホーマーを取り巻いて描かれている点だ。多様な人々におすすめできる作品だと感じる。また、トビー・マグワイアがどの映画でも純真無垢な少年や青年を演じられるのは、彼の努力や個性のおかげだと思う。衣装にもヴィンテージの雰囲気が漂い、楽しませてくれる。

10. 茶漬彦

    2025年8月11日

    2度目に観ました。
    シャーリーズ・セロンが出演していました。
    本当に美しいと思いました。
    映像が印象に残っていました。

    今見ると、そんなに美人だとは感じなかったけれど、
    やはり美しさは際立っています。特に後半が。

    ストーリーは、救われない小さな出来事の積み重ねのように思えますが、あのテーマ音楽や美しい映像を見ると、再び観たい気持ちになります。

    経歴の偽装については、ツッコミたくなる部分もありますが、そこは目を閉じて楽しみます。