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対峙の感想・評価

1. 加藤茂

   2025年12月19日

   ほとんどの場面は、一つの部屋に集まった4人の対話から成る。初めは世間話のようで、会の目的がつかめず、ただ重苦しい空気だけが伝わってくる。全員が痛みを抱え、立場は違うが、冷静さを保とうとする。それでも時には感情が暴走し、不要に思われる言動をしてしまう。ごく普通の日常のように静かに始まり、静かに終わる映画だった。

2. まさや

   2025年12月18日

   殺された息子の両親と、殺した息子の両親が向き合い、言葉を交わすだけの緊張感あふれる映画だ。過去の出来事を巡る対話は、当事者以外には答えが出ず、結論を求めてもすぐには見えない。四人全員が求めるのは「気持ちを収めたい」「救われたい」「楽になりたい」という一点に集まる。けれど人間は複雑で、真意を素直に表に出せない。すると、被害者の親は「そんなつもりじゃなかったのに」と誤解や苛立ちを募らせ、相手の言葉を受け止めきれずにフラストレーションが蓄積していく。加害者の両親もまた立場と感情の間で揺れ、受け止めようとする側が傷つく場面も生まれる。場に二組の親が揃えば、必然的に衝突は起きるものだ。彼らは本来、誰にも言えない思いをぶつけ合おうとしていたのだろう。子を思う気持ち、子の誤解を解きたい気持ちそんな気持ちの行き場を探す動きが、物語を支える核になる。加害者の父親は場を掌握しようとするが、どこか自信のなさがにじみ、言葉以上に内面の弱さを露わにしているように見える。事件が彼をどう変えたのか、それとも生来の側面なのかは分からないが、彼はこの中で最も自己開示が乏しい人物であり、そこが心配でもあった。被害者側の父母の説得力は、思考の道筋が滲み出る表現にあった。傷ついた人の前では、善意から「こう考えたらどうか」「こうすればいいのでは」と言いたくなるものだが、二人の前ではそんな言葉が届きにくいと想像させる。全ての事件の被害者家族がそうとは言えないが、あの二組には説得力が宿っていた。映画は進むにつれて、描かれる問題がいかに答えを持ち得ないかを、観客に突きつける。結局のところ大きな救済を見せるわけではないが、長い間口に出せずに抑え込んできた感情の吐露を通じ、少しだけ相手へと受け止められる瞬間を作り出す。被害者家族と加害者家族の気持ちが一時交わったかに見えた場面の後、現実は再び冷たく引き戻され、他人同士へと戻っていく。人の距離は変わり得ないという冷たい事実に歯がゆさを覚えると、最期に加害者の母親が心からの告解を放つことで、それぞれが背負ってきた罪の意識が少しずつ肩の荷を下ろしていく。 この作品は、他人同士の境界線を固く引いたまま、それでも重い罪の意識を背負い続ける必要はないと語りかける。構造は『おとなのけんか』を思わせつつも、各キャラクターを過剰に崩さずに描く絶妙な塩梅が光る。誰もが崩れかける寸前の緊張感、敵味方を安易に分けない人間の複雑さを、丁寧な筆致で描き出す秀逸な作品だ。

3. 佐之一郎

   2025年12月16日

   あぁ誰も幸せにならない。だが向き合わなければ変わらない、愛しい我が子のいない日々を乗り越えるための対峙が続く。

   加害者の父の支配的な言動に「その点が問題なんだ」と感じたり、加害者の母の”親だからこそ”という偏った言動に「ここでそれを言うの？」と少し引いてしまったり、被害者の父が”セラピストのアドバイスを守ろう”とする一方、本音があふれるような語気に心が締め付けられたり、被害者の母が”赦さなければ。だが我が子への無情な行為への怒りはどこに向ければいいのか?”という執念が伝わってきて、もう！
   全てが静かな画面を通じて痛いほど感じられる。ネガティブな感情が渦巻き、観ていて辛く苦しい。

   同じ「子を失った親」でも、そこには大きな隔たりがあり、その深淵を覗く勇気を持って集まった4人。
   加害者夫婦には贖罪の念と「息子だからこその想い」が、被害者夫婦には「どうして同じ家で暮らしながら加害性を放置したのか？」という疑問が、事件から6年が経ってもなお残り続けているからだ。

   こんな悲劇に巻き込まれたとしても、人は神を信じ祈ることができるのだろうか。被害者の父は「自分は敬虔ではない」と言った。
   エンディングで聞こえてくる合唱は、それでもまた明日が来て日々を続けなければならない遺族への温かな励ましのようで、私はそこに少しの救いを感じた。

   場所を提供している教会スタッフの模索している様子には「当事者ではない者の無力さ」が感じられ、自分も映画を観る中で感情が忙しいのに、結局は自分も無力だと感じてしまった。
   冒頭のあの絶妙な空回り感が印象的だ。
   主役4人が揃う前から、この映画は秀逸だ。視聴者を対峙の世界の圧倒的な外部者としてしっかり位置付ける。
   逃げることもできたのに覚悟を決めて出かけ、あの場で対峙し、向き合い、語り、泣いた4人の弱さをさらけ出す強さに心震える、ただの傍観者として。
   こんな素晴らしい視聴体験を提供してくれる名作だ。

4. へっぽこライダー

   2025年12月15日

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   映画鑑賞メモ
   20251216
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   _Mass
   _Directed by Fran Kranz
   _娯楽
   _前衛
   _瀟洒
   _感情
   _社会
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   校内乱射事件、加害者の親と被害者の親、教会、聖公会、賛美歌…
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   訴訟を起こさずに加害者を赦す、それはなんて強さと寛大さに満ちた心なんだろう。容易にできることではないので、見習いたい。
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   #対峙
   #夢見る少年プロジェクト #映画大好き #よしもと

5. 清水

   2025年12月14日

   銃乱射事件を題材にした作品として、加害者家族と被害者家族が教会の一室で対峙する。ワンシチュエーションの設定にもかかわらず、全く飽きることなく、息をつく間も与えられない緊迫感が続く。観客は3度も涙し、演技の真髄と圧倒的な説得力に引き込まれる。

   「あなたたちの息子が私たちの息子を殺した」。両家の親は、すでに息子を失っている現在もなおなぜを追い求め、知りたい気持ちと聞くべきかの葛藤の狭間で揺れ動く。言葉と感情がすれ違い、食い違いが生まれる中で、2組の親の苦悩は痛々しく美しい。

   これまで銃乱射事件をテーマにした映画は数多く見てきたが、これは最優秀作品として推したい一本。次点として『君が生きた証』を挙げ、この二作をセットで強くおすすめします。#対峙

6. プリンス

   2025年12月14日

   加害者の父親は見た目を気にしているようで、母親は感情的に訴える姿が男女の対比を巧みに表現している。物語の中頃に加害者が自殺したことが明らかになり、どちらの親も子供を失った遺族という共通点が浮かび上がることで、この対話の意味が一変し、興味深くなる。ワンストップシチュエーション映画として、2時間ずっと会話だけで成り立たせたのは見事だが、視聴者にとっての救いやハッピーエンドがないため、好みが分かれると思う。

7. ズワイガニ

   2025年12月13日

   別れの言葉は難しい。死ぬまでのあいだに、あとどれだけ人に会えるのだろうそんなふうに、私は最近ときどき思う。日常的に顔を合わせるわけではない親や友人、身近な人、いつか会ったきりの親戚や知人、遠くで見ている好きな人たち。人は必ず死に、いつか会えなくなる。いつその時が来るかは誰にもわからない。運がよければずっと先の話かもしれないし、すぐかもしれない。自分が先に去ることもある。相手が先かもしれないが、いつ、どこで、何が起こるかは予測できない。意図せず加害者になることも、望まずに関係者になってしまうこともあり、そして突然終わることもある。第三者の視点から見ても、それは地獄のような苦しみだ。あらすじをあまり読まずに観た作品では、被害者の親と加害者の親が対峙する場面しか見えない。対話が始まり、語られるたびに私たちは理解を深めていく。彼らがどんな人物だったのか。どんな日々を過ごし、家族にどんな思い出があったのか。誰が罪を犯し、どのようにして生命を奪われたのか。それぞれの遺族がどんな思いで生きてきたのか。互いに告白し合うことで、長く拘束してきた憎しみや後悔から解放へと向かうのだと、私は感じる。語ることは大切だ。言葉にしなければ伝わらないことが、圧倒的に多いからだ。私には相手が、私の視点で想像される存在にすぎない。人それぞれの苦しみは、語られて初めて形をとる。終わることのない憎悪と苦痛に捕らわれ続けるのは、耐え難い。忘れたいこともあるが、それがために前へ進めなくなることがある。むしろ、語ることで解放されたのは、被害者側の遺族のように見える。長く抱えてきたなぜ加害者を赦せないのか赦すことはわが子を忘れることなのかという思いを、あれだけの対話で手放せるだろうか。赦すことが容易だとは思わないが、その場に身を委ね、凝縮した思いを解き放つことは、想像するだけで重苦しい。加害者を責め続ける側にいる自分を、私は無関係で無責任な他人だからだと考える。もちろん当事者ならそうは思えないだろう。そもそも赦せるとは限らない。語り終え、共に苦しみ、子を大切に慈しんできた親同士が理解し合い、別れの言葉に詰まる現実は、極めて現実的だ。そして別れたあとで、またひとつ語られなかった悔恨がふらりとよみがえる。私はそれがいちばんつらくてこわかった。静かな室内に銃乱射が起こりそうな気配さえ漂っていた。被害者の母の語る後悔は、逃げ出すのではなく、身を差し出すことで息子を理解したいという思いだが、その結末を予見していれば、そうはならなかっただろう。それでもたしかに、それが息子を止められなかった母の、背負い続ける重荷なのだろう。生きている限り終わらない重さだ。ああしていれば、こうしていたら、という後悔は、たいがい手遅れでしか届かない。後悔せずに生きることはおそらくできない。そのときこそ、深い苦悩にさいなまれる。対話は、互いが席を同じにして初めて始まる。告解したいと思っていても、問う側であり続けても、和解しようとしても、相手がその気にならなければ始まりようがない。いつまでも始まらない対話もあり、始まらないまま終わってしまうことも、またある。

8. めがねもん

   2025年12月12日

   すごい。だが、どう評したらいいか難しい作品だ。あらすじを読まずにはいられなかった監督が極力フラットな視点で撮っているせいか、善悪を強く対立させず、どちらにも偏らせない。だからこそ役者の演技力だけが物語を牽引する説得力を生み出している。中盤あたりからその引力は格段に増していった。ジェイとゲイルが車内で交わす最初の会話で、事件が原因でこうなったのだと感じるよりも、そもそもゲイルの性質がそうなのだろうという理解が生まれる。そんな伏線の描き方も丁寧で素晴らしい。さらに、子供や事件の回想を一切映さない点も見事だ。本作の本質には「かわいそう」という感情は必要ない、と思える。とはいえ、回想がなくとも四人の会話だけで当時の情景を想像できる。そこに宿る巧みさだ。「何かが消え去った私たち全員の中でとても怖いんです。私が必死で求めたものは、考えていたのと違うあなたたちを赦せばあの子を失う」
   2025-180

9. 伊藤直

   2025年12月8日

   今、ものすごくつらい。自分が加害者だったら、うちの親は変なことしか言わないだろうな、という嫌な確信がある。

10. 田貫

    2025年11月30日

    ひたすら対話が続く映画なのに、思わず涙がこぼれた。久々にマーサ・プリンプトンを観た。
    対話だけが長く続く映画にも関わらず、涙が止まらなかった。マーサ・プリンプトンを久しぶりに見た。
    対話中心の映画だったけれど、泣けてしまった。久しぶりにマーサ・プリンプトンを観賞。
    ずっと対話シーンが続く映画なのに、つい涙してしまった。マーサ・プリンプトンを久々に視聴。
    対話のみが印象的な映画だったが、思わず泣いてしまった。マーサ・プリンプトンを久々に観た。