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ボーイズ’ン・ザ・フッドの感想＆レビュー

1. 影造

   2025年11月28日

   青春映画でありながら、主人公は治安の悪い地域に住む黒人青年で、未成年の出産やひとり親家庭、麻薬、銃問題、貧困といったテーマも描かれています。
   冒頭で流れる「黒人男性の20人に1人は殺される」というセリフは真実ではないようですが、劇中で示されるように、殺人による死は非常に身近な問題であることを表しています。

   アイスキューブの存在感は圧倒的です！

2. 小さな森

   2025年11月23日

   監督の半自伝的な作品である。

   負の連鎖の中、それぞれの選択が存在している。現実的に考えれば、きっとそうなのだと思う。

   けれども私には理解できない。なぜ、同じ境遇の人々同士で争うのか。異なる境遇の人を殺すことが許されるわけではないが、なぜ仲間同士で殺し合うのか？
   そんなに見栄やプライドが大事なのだろうか？
   根本的な原因を考えれば、白人が黒人を奴隷として連れてきたのが始まりであり、憎むべきは白人であるはずなのに。
   家族や仲間は大切にできるのに、別の集団に対しては容赦なくなれる。この現象が純粋な人間の姿なのだろうか？

   黒人の警察官が黒人を罵るシーンは、社会の構図やその中の歯車を連想させ、腹立たしいよりもむしろ悲しかった。

   ダウボーイは不遇すぎる。実は弟思いで優しい人なのに、環境や状況によりあのようにならざるを得なかった。

   歪んでしまった社会。
   狂った世界。

   Increace the Peace、平和を増やそう。

   この系統の作品では、私はスティーブン・ミルバーン・アンダーソン監督の『サウスセントラル』が一番好きだ。あれは理想の世界かもしれないが、その理想を現実にするためのメッセージだと感じている。

3. にゃむ

   2025年11月17日

   ロサンゼルスにおける黒人の高犯罪率や高貧困率の原因として連呼されがちな異人種間の対立や格差ではなく、黒人コミュニティの内部問題に焦点を当てた映画。こうしたテーマを扱った作品は意外にも少ない気がする。アフリカ系アメリカ人の監督が、わずか23歳で生み出したデビュー作という点も特筆すべきだ。『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観た直後に見ることで、さらに多くの考察を促された。アメリカ特有の問題銃社会や薬物の氾濫、歴史的背景、法律制度、多人種社会の負の側面が、社会的に弱い立場にある黒人コミュニティに深刻な影響を及ぼし、貧困からの脱却を難しくしていることがよくわかる。監督が伝えたいメッセージは明確で、描写には生々しい説得力が感じられた。この作品は監督の自伝的要素はないが、あの地区で「日常的に起きていたこと」を誠実に描いたことに間違いない。Ice Cubeの俳優デビュー作でもあり、その役どころは彼の経歴にぴったりで、演技も素晴らしい。ダウボーイは主役のトレ以上に今作の主要テーマを象徴するキャラクターだと思うが、彼はその難しい役を魅力的に演じ切っている。ラストの悲しみと無力感を漂わせた姿も見事だった。

4. 水依

   2025年11月9日

   アカデミー美術館で大規模に特集上映され、現地のNetflixで視聴可能になっている話題作。黒人社会のリアルを丁寧に描き、アイス・キューブが主演デビューながら素晴らしい演技を披露する。従来のギャング像とは異なるエリートが主人公である点が新鮮だ。物語は序盤こそ父親が主人公なのかと見せる親子のヒューマンドラマ寄りだが、中盤から青春色が濃くなり、終盤にはギャング展開へと転じる。そのため青春や親子の深掘りをもっと期待してしまう気持ちもあるが、リアルさはしっかりと伝わる。アイス・キューブの演技はデビュー作としても充実しており、父親役のローレンス・フィッシュバーンも圧巻。マトリックスのモーフィアスを連想させる佇まいが印象的だ。

5. るるるる

   2025年11月1日

   治安の悪い地域に暮らす黒人の少年たちの成長を描く物語として始まるが、些細な揉め事がきっかけで現実は急転する。あっという間に暴力と混乱が広がり、彼らが直面するのは自分たちの生き方を問う葛藤だ。そうした地域で自分だけ平穏を保つのは難しいのかもしれない売人の兄が普通に同居している現実が、胸を締め付ける。社会の構造なのか、それとも人間の本性なのか

6. どりーん

   2025年10月24日

   「シティ・オブ・ゴッド」の次に描くのは、米国ストリートのリアリティ。
   ロサンゼルスの凶悪エリアに暮らすTre（キューバ・グッディングJr.）は、厳格な父フューリアス・スタイルズ（ローレンス・フィッシュバーン）に育てられた。向かいに住む友人のRicky（モリス・チェスナット）は大学からスカウトが来るほどのフットボールの名選手だったが、兄のDow Boy（アイス・キューブ）はストリートギャングとして何度も刑務所での生活を送っていた。幼馴染の3人は、厳しい環境の中でそれぞれ将来を悩む。

   王道でありながら生々しいヒューマンドラマ。90年代は黒人差別が深刻で、黒人同士の犯罪が絶えない地域で、生き抜く若者たちのリアルが描かれる。

   主人公のTreは荒っぽい面もあるが、1人親で育てた父の厳しくも正直な教えのおかげで、道を踏み外すことなく大人へと成長する。父・フューリアスが示す生き方は、黒人が誇りを持って生きる姿の象徴のようにも映る。彼の言葉は作品の核となるテーマを支える。

   「誰でも子どもはつくれる。育てるのはべつだ」「真剣に未来を考えろ」「1人息子を死なせるもんか」 など、父の信念は終始一貫してTreを導く。

   そしてTreは、そんな厳しい父に敬意を抱きつつ、社会の荒波の中で一人前の男へと成長していく。スポーツの才能を活かして友人リッキーとも、不良のダウボーイとも、黒人としてのプライドを失わずに関係を築く。

   一方、作品には2人の黒人警官が登場するが、彼らは人間の仮面を被ったケダモノのように振る舞う存在だ。自分と同じ黒人でありながら、警官としての名誉を振る舞いの根拠にしているかのようで、黒人同士の憎悪を象徴する場面として強烈に描かれる。

   小さな衝突がきっかけで、幼馴染3人が悲劇の連鎖に巻き込まれる。その怒りや悲しみ、憎悪は行き場を失い、残された2人の運命がまるで対照的に開くエピローグは、ほろ苦くも現実感に満ちている。

   「キリのない殺し合いだ」

   この街に日常的に起こる出来事を知ることは、私たちの理解を深める一歩だ。治安の悪い地域の人々も、学校へ通い、仕事をし、家族や恋人を愛する普通の人間だという真実を忘れてはならない。

   「平和を広めよう」

   丁寧なドラマ描写のおかげで、悲しみはより深く心に染み渡る。

7. 中西智代梨

   2025年10月17日

   トレ父のように道を示せる大人になりたいそう感じさせる作品だ。アイス・キューブの出演や、当時のファッションと音楽のかっこよさが印象的で、カルチャーを感じられる青春映画かと思いきや、差別や暴力、そして平和について深く考えさせられる重いテーマが詰まっている。

   リッキーがテストをクリアする場面、ダウボーイがやっと改心したはずなのにという結末には、悔しさが残る。単なる90年代ストリート映画ではなく、家族・友情・そして人としての生き方を問いかける一本だ。）

8. いろすえ

   2025年9月28日

   映画でありながら、ドキュメンタリーのようなリアリティを感じさせる作品。特にスタイルが抜群で、自分の好みにぴったり。

9. イーロン・マヌク

   2025年9月27日

   ロサンゼルスの犯罪が多発する地区で育ったトレと彼の友人たち。淡々と描かれる彼らの半生には、青春と恋愛、そして犯罪や銃社会が密接に絡んでおり、同じ黒人の”Brother”同士として警戒し合い、常に怒りを抱えている。

   彼の父が教えた責任、尊敬、性教育、差別。トレが父から受け取った影響は計り知れず、どんな環境でも優しさを忘れずにいることは難しい。厳しい状況下で善であり続け、周囲に疑念を持ちながらも差別に屈服せず生きるのは容易ではない。自己防衛の方法すら簡単ではないのだ。牧師や教師のような父の存在は非常に大きく、理想的な親の姿であり、全ての親が見習うべき手本となる。

   リッキーがトラブルに巻き込まれてから、恐怖感が心に根付いた。怒りをもって行動することは間違いではないが、それ以上に何ができたのか、常に考え続けている。ダウボーイが「世界には暴力が氾濫していると報じられるが、何故この街のことは報道されないのか」と涙ながらに訴える。その言葉は真実だ。彼の行動が正しいとは言えないが、状況を打破する方法を考える余裕が持てないのが現実だ。
   変わるべきなのは彼らだけではなく、社会全体、さらに世界全体だ。差別という仕組みや価値観そのものが問題なのだ。この映画が公開された92年から今までどれほど変わっているのか、考えさせられるが、ダウボーイが言うように、”現場”の実情を本当に理解することはできないのかもしれない。せめて警察が少しでも改善していることを願う。

   考えさせられる映画でありながら、90年代の衣服や音楽の魅力も忘れてはいけない。重いストーリーを抱えながらも、同時に美しさを持った素晴らしい映画だった。現実を直視しつつ、平和を願う作品である。

10. 山根和典

    2025年9月24日

    続けて観た影響で『Menace II Society』と重なる部分がある。
    ローレンス・フィッシュバーンが印象的。