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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅の感想＆レビュー

1. B2mama

   2025年11月22日

   このどこか行き着かない感覚が、時に無性に心地よいと感じることがある。真夏の夜に特有の、希望をすでに失っていることを暑さと湿気が覆い隠す手触り。その先に血と性の交わりを描くことで、ガルシア＝マルケスに近づき、アーネスト・ヘミングウェイ、アントン・チェーホフ、レイモンド・カーヴァーといった短編の名手たちが、その手前で筆を置くような領域に踏み込む。

   アレクサンダー・ペインにも、そうした雰囲気が色濃く漂っている。

   高齢の父ウディとその次男デヴィッドの物語。モンタナ州に住むウディは高額当選の詐欺を信じ込み、ネブラスカ州リンカーンまで約1500kmを歩いて行こうとする。家族はウディを止めようとするが、彼は頑なにその信念を貫いている。高齢によるものか、性格によるものかが混ざり合い、家族の苛立ちが一層強まる。

   もしもデヴィッドが若ければ、『ギルバート・グレイプ』（ラッセ・ハルストレム監督, 1993年）のような清々しさを感じられたかもしれない。しかし彼自身は、まるで出口のない泥沼にはまるように中年へ差しかかっている。おそらく彼は気づいている。自分の前には父ウディのような姿が待っていることを。

   ついにデヴィッドは、重い苛立ちと諦念を胸に、父ウディを車でネブラスカ州まで連れて行くことになる。その道中、ウディは入れ歯を失くし、呆然とするデヴィッドの苛立ちと鈍い絶望感が漂う。

   これらの描写は、ヘミングウェイやチェーホフ、カーヴァーたちが描いた出口のない風景と深く結びついている。30代後半に入って以来、こうした場面がもたらす独特の感覚を求めるようになったのは、きっと自分の苛立ちと不安定な未来がそこで映し出されているからだろう。

   そして二人はネブラスカ州に辿り着く。そこは父ウディの生まれ故郷であり、彼の兄の家族に会うための場所でもある。

   初めは冷淡だった親族たちも、ウディが酒を飲みながら語る高額当選話を信じ、態度を一変させる（コーエン兄弟の『ファーゴ』にも通じるコメディ感が感じられる）。一方でデヴィッドは、父が若いころにどう生きていたのか、少しずつ知ることになる。

   こうした出来事を経て、父への苛立ちは徐々に変化するものの、父子関係は最後まで平行線をたどる。ラストに描かれる無免許の父ウディが車を運転して帰るシーンも、一瞬の高揚に過ぎない。

   この感覚はとても理解できる。おそらく父子は死に別れるまでずっと平行線をたどり、死後も入れ歯を失くした線路での出来事のように、自身の姿に父の影が映る形でしか触れ合うことはないだろう。望んだものではないとしても。

   高湿度の夏の暑さは、息の中にそうした予感を含むことがある。予感を吸い込み、静かに吐き出すたびに、静まり返った家族の気配を感じると、僕が掴んだものの質感が心に響いてくる。ある時期を過ぎてから、僕にとって生きるとは、そのように呼吸することになった。

2. 金魚埠頭

   2025年11月16日

   白黒映像でありながら、流れる風景が美しいチグハグな親子のロードムービー。夫婦の正反対な性格が笑いを誘い、特に奥さんの豪快さには思わず惹かれる。監督の『アバウト・シュミット』が大好きなので、ほかの作品もこの機会に鑑賞してみようと思う。

3. 関西風

   2025年11月7日

   生前、彼を執拗に狙っていた男の墓前で、お婆ちゃんが大胆にスカートを翻す。ファンキーすぎる。
   生前彼を追っていた男の墓の前で、お婆ちゃんがスカートを大きくひるがえす。なんてファンキー。
   生前の彼をめぐって騒いだ男の墓前で、お婆ちゃんがスカートを翻し、場を沸かせる。これぞファンキー。
   生前、男の執着を受けていた彼女の墓の前で、お婆ちゃんがスカートをべロンと翻す。話題騒然のファンキーさ。
   墓前でスカートを翻すお婆ちゃん。生前彼を狙っていた男の話題を、ここまでファンキーに染める。

4. みにまむ

   2025年11月5日

   過去の鑑賞メモ。
   くじを引いて当選した老人が、賞金を受け取るために旅をするロード・ムービー。

5. オタクのおっさん

   2025年10月4日

   知らずに観たのだが、「ホールドオーバーズ」監督の別作品だった。地味さの中に潜む引き込まれる魅力はここでも同じ。何度観ても、味が沁みてくる作品だ。シニア陣の呆け感は自然体なのか、演技なのか。高齢の親を持つ自分と同世代（Over50）には身につまされる思いがある。近づいたり離れたりする父と息子の関係は、いつも難しい。自分自身と父の関係、そして自分と息子たちの関係を重ねて観てしまう。お母さんのアナーキーぶりが時折可愛く映る場面もあるが、それが日常だと厳しさも増すだろう。結局、そういうことだ。

6. 岡田倫太郎

   2025年10月1日

   ジューン・スキップは本当にキュートすぎる。１０年後、この映画でジューン・スキップがオレオレ詐欺にカモられる役を撮影するとは（映画『テレマがゆく』）そんなメタ的な楽しみも含めて、ぜんぶ好きな作品でした。エンディングがここまでハッピーでなくても、ロードムービー的な旅の過程を楽しめたので、中盤から後半は少しお腹いっぱいになるくらいでした。監督の『ホールドオーバーズ』も『サイドウェイ』も好きだったので、もっと作品を観たくなりました。こういう系の映画はどこで見つけられるのだろう。ChatGPTにも教えてもらえず、探し方に途方に暮れています。

7. ようび

   2025年9月29日

   田舎ならではの嫌な要素が強調され、胸が苦しくなる場面が多い作品です。主人公の父の純粋さと、対比される暗い側面とのバランスが絶妙です。歳を重ねて再度観ることで、各シーンの深みをますます感じることができるだろうと思います。

8. 神谷浩史

   2025年9月26日

   古びたモノクロ写真のアルバムを眺めているような感覚。
   白黒の色合いが、さらにこの町が時代に取り残されている印象を強めている。

   乾いた空気の中に少し冷たさが感じられつつ、根底には愛があるという絶妙なバランス。
   まさに私の心に響く作品だ。
   落ち着くのに、心がほんの少し動かされるような映画。

   私も彼氏もアレクサンダーペインの映画が大好きだからこそ、人生に対する感性が共鳴し、同じ感覚を大切にできることが嬉しい。

9. しまにゃん

   2025年9月26日

   ネットの詐欺広告に引っかかったおぼろげな父親と、それに付き合う息子の二人旅。特に何が良いとは言えないけれど、なんだか心温まる感じがする。

10. かず

    2025年9月19日

    徘徊しているお父さんを優しく支える息子の物語。

    個人的には、ストーリーというよりはその雰囲気を楽しむ作品だと感じました。アレクサンダー・ペイン監督特有の温かさが少し欠けていたようにも思います。

    しかし、このようなのんびりとしたロードムービーも最高ですね。

    また鑑賞したいです。