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ディア・ハンターの感想・評価

1. White Unicorn

   2025年12月14日

   正直、戦争が始まるまでの展開が長すぎて途中で心が離れてしまった。その分、戦後の展開が作品の肝になるのかもしれない戦争の場面は突然現れて、突然終わるし、ほんの少ししか描かれていない。戦争映画というより、戦後を描いた映画の印象だ。

2. 松岡禎丞

   2025年12月14日

   本当に辛い、厳しい、涙が出た。

   感情の整理法のような作品だと思う。

   大人になっても愉快なバカをやり続ける友情を描写し、結婚式の盛大なダンスシーンから次第に、過酷なベトナム戦争の場面へと移行する。帰還した後も、登場人物たちが心身に深い傷を抱えているのが切実に伝わってきて、本当に辛い。

   前半の賑やかな場面でも、ベトナムから帰った兵士の発言やワインの滴がこぼれるシーンなど、後半の暗転を予感させる不穏さが漂っていた。

   シカ狩りに向かう山々は非常に美しかった。

   これまで観た中で、ベトナム戦争をテーマにした映画の中で最も心に重く響いた作品だった。

3. 孔明

   2025年12月5日

   ずっと観たかった作品だったが、心の落ち着く瞬間を待って結局保留にしていた。観終えた今、私は強い沈鬱に包まれている。それでも、この闇の奥にある苦しさこそが、本作を名作たらしめる理由だと感じる。

   戦争映画は銃撃戦だけで語られるものではない。フルメタルジャケットやブラックホークダウン、プライベートライアンも戦場の壮絶さを浮き彫りにする傑作だが、私にとってディア・ハンターの持つ温かな包容力こそ心を打つ魅力だった。ああ、これこそ戦争映画だと、胸を打たれる。

   日常と戦場の対比と変化は、凄惨さをリアルに突きつけ、観る者の想像力を掻き立てる。故郷で育ち、気の置けない悪友たちと過ごす笑いあふれる日々、音楽と酒とダンス、そして幸福な結婚式そんなすべてを捨てて出征していく男たちを、どうして皆が笑顔で送り出し、迎え入れられるのか。私には理解できない。戦争という最大のエゴが、それを許してしまうのだろうか。ベトナム戦争の起こりと終わりを知るほど、虚しさが深まる。

   喪服に沈む闇の中、やるせない表情で歌われるアメリカ国歌には、希望は見えない。過去の幸せな日々はもう戻らない。戦争がすべてを変えてしまった。

   いつも冷静で理性的なマイケルだからこそ、悲しみが際立つ。ロシアンルーレットの場面が強く印象に残ってしまうけれど、出征前に盟友ニックと裸で約束した夜は別格の名場面だ。あの純粋なニックの瞳を、マイケルは守ってあげたかったはずだろう。最後の I love you にすべてが凝縮されていて、胸が痛い。ニックが最後までマイケルのことを思い出してくれていたと、私は信じたい信じさせてくれなければ、この気持ちは救われない。

   クリストファー・ウォーケンの起用を手掛けた人の才気に乾杯。彼をあんな表情に変える戦争なんて、この世から消えてしまえばいいのに。でも、それが叶わないのが、いちばんつらい。

4. みやこ

   2025年11月21日

   ペンシルベニア州を舞台にした鹿狩りをモチーフにした映画として語られる代表作のひとつが『ディア・ハンター』だ。かつては『プリズナーズ』が同様の鹿狩りモチーフを取り上げたことを思い出させるが、本作では鹿が聖書的・教義的な信仰の象徴として捉えられるのかどうか、解釈は分かれるところだ。むしろ本作は、キリスト教的信仰が無垢（イノセンス）とどう関わるのかを問う物語として読まれることが多い。原理主義的な文脈の中で鹿を異教的存在として描く読みも、文化の深層に流れる語りを映し出している。そうした意味で、ディア・ハンターの鹿狩りは、無垢の喪失を象徴する出来事として機能するのかもしれない。

   長さはおよそ３時間（183分）、三部構成で「故郷・戦場・帰郷」という流れをとる。故郷はペンシルベニア州の鉄鋼都市で、ロシア系移民が暮らす町。戦場はベトナム戦争であり、帰郷の場面へと移る。

   以下、ネタバレ。

   ＊

   最初の故郷パートでは、マイケル（デ・ニーロ）、ニック、スティーブンのベトナム三人組と、居残り組のスタン、アクセル、ジョンという六人の仲間の姿が描かれる。特にスティーブンの結婚式の場面が長く引き延ばされ、群衆の賑やかな宴会と、後の鹿狩りの静けさとの対比が強く印象に残る。

   戦場パートでは、捕虜となった三人が北ベトナム軍の前でロシアン・ルーレットを強要される。ここでの緊張感は、戦争そのものが巨大なロシアン・ルーレットであったかのような感触を与える。マイケルの機転によって三人は窮地を脱する。

   帰郷パートでは、ニックは正気を失い、スティーブンは足を失う。マイケル自身も鹿狩りの場面で銃を引くことができず、無垢を欠いていく。ラストで仲間たちが「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌う場面は、共同体と国家が作り出す幻想の中で、彼らがどのように生を受け入れ、どう生きていくのかを静かに問う。

   ＊

   また、本作にはロバート・デ・ニーロ演じるマイケルとクリストファー・ウォーケン演じるニックの間に、性愛的な対象としての関係を示唆する読み方がある点が、公開時から話題になった。ニックとリンダ（メリル・ストリープ）との関係性と絡め、帰郷パートでその複雑さが浮かび上がるという解釈もある。1970年代末の公開作である『地獄の黙示録』や『エイリアン』と並ぶ年でもあり、父性の喪失と異性愛の終焉とが並走するように描かれている、という指摘も耳にする。

   この作品は、ペンシルベニア州の鉄鋼の町に集う移民とアメリカ社会との関係性を映し出し、戦争経験が人間の内面にどのような影響を及ぼすかを深く掘り下げる。無垢の喪失、共同体の儀式、国家と個人の関係性これらが絡み合う中で、『ディア・ハンター』は父性の終焉と二つの異性愛的終焉が時代とともにどのように現出してくるのかを静かに問いかけてくる。

5. 池田祐太

   2025年10月28日

   戦争の傷跡を描いた名作。

   デニーロとウォーケンの役作り（特にデニーロのアプローチ）が非常に印象的で、まずそこに引き込まれた。

   中盤までは明るい雰囲気だった分、戦場のシーンに入ると非常に重苦しい気持ちになる。
   あのような生死が直結する状況に置かれたら、自分が今生きているのか亡くなっているのか分からなくなるだろう。

   ハンティングと戦争の関連性についてはあまり理解できなかったが、撃たれていた鹿の行く末が気になった。

6. 浩史

   2025年10月21日

   A. まだ早い。自分にはまだ受け止めきれない映画だ。早さの問題なのか、それとも別の理由なのか。いずれにせよ、この読後感は今の私には処理できない。

   B. まだ時期が早過ぎる。私には受け止めきれない、そんな映画だ。早さの原因なのか、それとも別の理由なのか。とにかく、この読後感を今の自分は受け止められない。

   C. まだ早い。僕にはまだ早すぎる。そんな映画だ。いや、早さだけの問題なのか？いずれにせよ、この読後感は今の自分にはどう扱っていいか分からない。

   D. 映画はまだ時期尚早。そのせいで、読後感を今の私には処理しきれない。早さの問題なのか、それとも別の要因なのか。

7. めーやん

   2025年10月19日

   ウォーケンさんを目当てに観ました。

   途中、何を見せられているのか一瞬戸惑いましたが、結局はラストのロシアンルーレットのためだったのかもしれません。ただ、全裸で走り回るデニーロは必要なシーンではなかったかなと思います。

   結婚式のシーンはかなり長かったですが、少し独特な風習が見られ、正教会のものでしょうか？その点では興味を引かれました。

8. 山田太郎

   2025年10月18日

   ディア・ハンターは、まさにそのテイストを体現する作品だ。ウォーケン演じるニックは圧倒的な存在感を放ち、その佇まいは戦メリ時代のデヴィッド・ボウイを思わせる中性的で危うい魅力に満ちている。マイケル（デ・ニーロ）との関係は友情を超え、劇中には「愛してる」というやり取りさえ生まれる。メリルがニックの恋人であるにもかかわらず、マイケルが彼女に踏み込めない理由を、彼女がニック自身だからだと読み解くと、物語の核心にさらに深く迫れる。

   それに対して、ジョン・カザールが演じるスタンは「女好き」という異性愛の一面を背負いきる存在だ。最もマッチョでないのが逆に笑いを誘うが、その露骨な異性愛アピールは仲間内で浮いて見え、むしろ攻撃の的になる。ハンター仲間の視点からは、彼がむしろマイノリティの象徴にも映る。メリルという存在自体が「女性であること」が男同士の親密さに水を差す要因として描かれ、彼女はハンターたちの同性間の空間を揺るがす存在として位置づけられる。

   鹿狩りの場面は本作の象徴的なモーメントだ。鹿は同性愛を暗示する象徴として読み取れ、鹿の角は男らしさの誇示を示す。撃ち抜く行為は「ホモを狩る」儀式のようにも見える。銃はやがてロシアンルーレットへと転換し、銃＝男性器、弾丸＝精子、発射＝射精といった連想が浮かび上がる。互いに銃を突きつけ合う場面は、性愛と死の境界を同時に共有する男根ゲームの緊張を生み出す。

   ラストでニックが自分を撃つ場面は、単なる悲劇にとどまらず、マイケルとの究極の結合を意味しているようにも読める。射精と死が同時に訪れる瞬間として解釈でき、彼はマイケルとともに発射して死んだのだ。

   スティーヴの足の負傷は去勢のメタファーと捉えられる。男根ゲームからの脱落と家庭への回帰が示唆され、三人の運命はここで大きく分岐する。暴走するスティーヴを柱に押さえつけるクライマックスの演出も、下半身を直接映さず抽象的な視点で捉えることで緊張感を高めている。

   赤い鉢巻は確かに印象的だが、ロシアンルーレットの緊迫感を考えると白地の方が血の対比が際立つ。赤地なら緊張感の演出としては薄れてしまう。主催者が赤を選ぶ意味には、共産主義の象徴性や冷戦時代の背景といった解釈が絡み、それが作品全体の意味づけとなっていく。

9. 田貫

   2025年10月18日

   私が一番強烈だと感じた戦争映画はこれだ。強烈すぎて、思い出すだけで胸に強い印象が残る作品。

   戦争映画だと知って構えて観始めたせいか、冒頭のおよそ1時間は結婚式の場面が続く。表面的には幸せそうな光景でも、母の反対、ドレスにこぼれたワイン、不安定な友人たちなど、どこか不穏な空気が漂っている。
   その結婚式が終わると、場面は戦場へと移る。銃撃戦のような派手さはないが、生々しい描写と人の醜さ、戦争の悲惨さが同時に浮かび上がる。アメリカ対ベトナムといった単純な二項対立ではなく、北と南の対立、そして同じ民族同士にも起こり得るイデオロギーの対立が激しく描かれる。

   しかし戦場のシーンは意外と早く終わり、あっさりとアメリカへ戻ってくる。ここからが本当に凄い。戦争がいかに人間を変えてしまうのかを、結婚式や鹿狩りの場面を皮切りに、否が応にも見せつけられる。そして有名なロシアンルーレットは本当に辛い。感情や理性を抑え込むようになる過程が痛々しく、フルメタルジャケットにも似た感覚を覚える。

   そして葬式の場面のあとに流れるGod Bless Americaは、アメリカでは典型的な愛国歌だが、戦争を通して「アメリカ」がもたらした破壊を見たあとで歌われるため、単なる愛国心の表現ではなく、苦味を伴った皮肉のように響く。

   本当にすごい、絶対に観るべき一本。ただ、見るには相当な覚悟が要る。長尺で強烈な描写が連続するため、受け止める準備が必要だ。

10. はるか

    2025年10月17日

    前半の1時間は贅沢に、そしてやや執拗に若者たちの日常を描写しており、結果的に後半の悲劇が際立っていたのが良かった。特にパーティシーンでは、セリフではなく目線や表情を通じて登場人物の心情が表現されていて、見事だと思った。

    1980年代に制作されたベトナム戦争映画は、アメリカの行動を批判的に描く過剰な演出が特徴だったが、本作は戦場にいる個人の感情に焦点を当てている。また、ロシアンルーレットのシーンでは、ベトナム側の狂気が巧みに表現されており、特に印象に残った。

11. 中西智代梨

    2025年10月15日

    もうあの頃には戻れない気がする。ニックと誓った約束を思い出させる。ロバート・デ・ニーロの笑顔は、なんて可愛いんだろう。

12. 読書の虫

    2025年10月9日

    結婚式・戦場・帰還後の三部構成で描かれる物語。帰還後の仲間たちの日常の穏やかさが、戦争を体験していない自分には強く刺さる。出征前に感じた同じ日は二度と来ないという青春の終わりをも同時に描く点も印象的だ。パートごとの対比が巧みに効いている。ロシアンルーレットの描写が両サイドに存在することで、戦争の無意味さと正義の不在を滑稽さとして浮き彫りにする。主人公の性的マイノリティの示唆や、ロシア系移民、ベトナム帰還兵といった複数のマイノリティ要素が複雑に絡み合っているように思えるが、深掘りしすぎずに楽しむのが良い。観るきっかけはフランキーバリの楽曲を聴きたかったためだが、期待以上の映画だった。

13. 志乃

    2025年10月9日

    戦争映画の名作
    意外にも戦争の描写は少ないが、前半の青春の輝きと帰還後の絶望感が鮮明に描かれている。全く変わってしまった世界に戻れない辛さは心に刺さる。ベトコンのロシアンルーレットの緊張感は非常に強烈だ。ラストシーンでのデニーロとクリストファー・ウォーケンの演技は圧巻だ。

14. nanasi

    2025年10月8日

    リアルな生活で精神的に苦しんでいるときに、ベトコン映画を観ることで、自分よりも辛い境遇にある人々の存在を知る。そして、恵まれている自分を再認識し、現実を頑張る力を得る。しかし、この完璧に思える理論には大きな欠陥がある。それは、そもそも理論でしかないということだ。

    現実がうまくいかないと、ベトコン映画を観ることで登場人物より恵まれていると感じる一方、実際の辛さにベトコン要素を重ねてしまうのが問題だ。そうなると、まるでベトナムにいるかのような感覚に陥ってしまう。

    これには、作品のアポカリプス的な側面との共通点も見受けられる。もともとベトコンをテーマにしていなかった作品にベトコン要素が取り入れられた印象だ。そして、一度観ると忘れられない印象的なシーンが存在すること。特に、原案以上にベトナム戦争の要素が際立っている点に驚く。

    キャラクター描写が特徴的で、デニーロの友人の関係やスタンとの細かい描写に、作者の意図が感じられる。主人公がゲイであるかどうかの議論もあるが、微妙な描写によって逆にそれが良さを生んでいる。

    これだけの共通点を持ちながら、コッポラの作品ではないというのも興味深い。もしかしたら、この時代のトレンドが影響しているのかもしれない。

    公開当初、ベトコンが捕虜にロシアンルーレットを強要したという記録がないと批判されていたが、戦場で戦った人々は結局は銃弾のリスクを背負うギャンブルに巻き込まれていたので、実際には大きな違いはないと思った。