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裸足の季節の感想＆レビュー

1. 石田彰

   2025年10月15日

   トルコの文化を学ぶために見た作品だ。監督のインタビューによれば、トルコの一部の学校では男女が同じ階段を使うことが禁止されているという。1930年代に早くも女性に参政権を与えた国でありながら、女性の地位は今なお複雑な状況にある。

   家に閉じ込められた5人の美しい姉妹たち。日差しに輝く肌、長い髪はしなやかで、じゃれ合う姿は愛くるしい。しかし、最も印象に残ったのは末っ子ラーレの怒りに満ちた瞳だった。怒る女性は実に美しい。女性はもっと世界に対して怒るべきだと感じた。

   『雪の轍』でも思ったが、地方に住むトルコ人にとってイスタンブールは、日本の東京や大阪のような存在なのかもしれない。イスタンブールの名前は、ギリシャ語の「イス・ティン・ポリン（街へ）」に由来するらしい。

   新たな人生への不安と期待が交差する中、5人の楽しい思い出が重なるラストのイスタンブールの街並みは、心に響く。彼女たちの本当の物語は、今ここから始まるのだ。

2. リョウジ

   2025年10月1日

   透き通る世界の中で葛藤を抱えながら生きる少女が、ついに大きな一歩を踏み出す。封建社会の抑圧に抗う彼女の姿は、見る者の心に憧れとして映るだろう。

3. つかまる

   2025年9月30日

   現代の西側から見ると、トルコの田舎の価値観はあまりにも異様に感じられる。両親を亡くした5人の美しい姉妹がいる彼女たちは、引き取った厳格な叔父によって監禁され、さらにはパワハラやセクハラにも苦しむ状況に置かれていた。一人は悲劇的な選択をし、末っ子が姉の一人と共に強行脱出を図る。彼女たちはイスタンブールを目指すが、都会では悪い大人たちに狙われる危険も伴う。ただ、彼女たちの行き先は学校の恩師のものであり、ささやかな希望が見えてくる。彼女たちの幸せを願うしかない。ヤシンくんは良い人だ。

4. るるるる

   2025年9月22日

   事故で両親を亡くし、祖母と叔父に育てられる五人の美しい姉妹。自由を奪われ、家に閉じ込められ、一人ずつ結婚へと導かれていく。男尊女卑と貞淑を求める社会の影響は、田舎ならではの強い支配として現れ、都会の風景とは異なる感覚を作り出す。五人の美しさは同時に深い悲しみを生み、特に三女の悲劇は強く心を打つ。十三歳の末娘が見せる勇気ある行動は、明るい未来を切り開く希望となるのか。時代と場所を越えて自分の道を切り拓くための行動が救いとなる。自由な選択ができることのありがたさを、あらためて感じさせる。

5. たなか

   2025年9月11日

   鑑賞日時：2025年8月31日
   鑑賞方法：U-NEXT
   鑑賞数：2025年146本目

   檻の中の小鳥が歌うのを止め、翼を広げた瞬間そんな寓話のような場面に出会う。しかしこれは寓話ではない。生々しい現実の物語だ。

   封建社会の圧力に押し潰されていく五人の姉妹の姿は、あまりにも残酷で息苦しい。学校帰りに男子と無邪気に遊んだだけで「不純」とされ、次々と結婚へと追いやられていく姉たちの運命を見せつけられると、社会はドラマというよりも自由を奪われることそのものへのホラーに思えてくる。

   この中で末っ子ラーレだけが不条理な社会に迎合しない。なぜ彼女が行動に出たのかそれは彼女自身の精神性のほか、四人の姉の運命を見届ける時間があったからだろう。本来なら、なすがままに大人や男が決めた規律に従って生きるしかなかった人生。けれど、ラーレはただの順番待ちのように受け入れることを拒んだ。反骨精神というより、生きる本能に近い叫びだ。

   彼女の脱出は単なる家出ではなく、封建社会の網を破る小さな革命として胸に迫る。彼女が選んだ勇気は、姉たちが掴み取れなかった自由の形見であり、未来への宣言だ。

   窓から差し込む光、裸足で駆ける瞬間の風、閉ざされた家の重苦しさすべてが「生きるとは何か」を直感的に語ってくる。最後にラーレが走り抜けるその姿に胸を打たれる。自由を奪う仕組みは国や文化の違いを超えて存在する。だからこそ、この物語は遠い国の出来事ではなく、どこにでもあり得る今の物語として響くのだ。

   以上
   #アユム2025年鑑賞作品#アユム25年8月

6. 中平一樹

   2025年8月31日

   ヴァージン・スーサイズ的な静かな印象を予想していたが、本作は儚さを超えた躍動感に満ちた映画だった。トルコの田舎には、ここまで強い抑圧が存在するのかと考えさせられる。姉の初夜の後、大人たちが彼女の処女かを問いただしてくる場面は、気持ち悪さが際立つ。激しい場面が次々とつながり、テンポは快適に進む。ラストは、白熱の籠城シーンで締めくくられる。

7. 伊藤直

   2025年8月23日

   親を亡くした5人姉妹が男の子との交流を祖母と叔父に禁じられ、家に閉じ込められるという物語。トルコにおける厳粛な家父長制が、女性に自由を与えず息苦しい状況を生み出しています。姉妹はほぼ軟禁状態で花嫁修行を強いられ、長女ソナイと次女セルマはお見合いで結婚させられ、三女エジェは自ら命を絶ってしまいます。四女ヌルは叔父から虐待を受けており、祖母は彼女を結婚させようとします。叔父の暴力がエスカレートし、軟禁は次第に監禁に変わっていく様はまるでホラーのようです。医者による処女検査や初夜後の出血確認など、残酷な習慣も描かれています。そんな中、末っ子ラーレは逃げるためにトラックドライバーから運転を教わり、姉たちが大人に逆らえない中で、彼女だけが希望の象徴となります。逃亡は失敗に終わるものの、目的地であるイスタンブールへとたどり着き、担任の先生の家を訪ねることに。手紙のやり取りで得た住所が役立つとは思いもよりませんでした。結末は素晴らしく、5人姉妹の美しさがこの物語の辛さを和らげてくれました。邦題は残念ですが、内容は感動的です。

8. 杉山 真

   2025年7月17日

   【第88回アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート】
   トルコのデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督による長編デビュー作。カンヌ映画祭監督週間に出展され、ヨーロッパ映画賞を受賞。アカデミー賞ではフランス代表としてノミネートされた。

   実話が元になっているのなら恐ろしいが、フィクションであることで少し安心できる。作品全体が緊張感に満ちており、観ていて胸が押しつぶされそうになる。しかし、希望を感じさせる結末が救いとなっている。

   トルコ版『ヴァージン・スーサイズ』とも評されるが、未見のため比較はできない。

   父親に監禁される五人の姉妹たち。その一人ずつが結婚させられていく中、末娘は反発し、逃げ出そうとする。

   男尊女卑の思想が色濃く、「女は貞淑でなければならない」という価値観が根付いている。父親によるモラハラやセクハラ、パワハラが激しく、観るのが辛かった。

   トルコの田舎ではこのような考えが強いのだろう。今なおこうした考えが広まっていることは大問題だ。都会であるイスタンブールに逃げようとする姉妹たちには、違った世界が広がっていることを願う。

   一人ずつ追い込まれていく状況の中、力強く自由を求めるラーレの姿が印象的だ。デビュー作らしいみずみずしさと、力強いフェミニズムメッセージを込めた秀逸な作品。#第88回アカデミー賞 #第68回カンヌ国際映画祭

9. 読書の虫

   2025年7月12日

   U-NEXT字幕版で視聴可能なティーンエイジ・ドラマ『野生馬』。イスタンブールから約1000km離れた黒海沿岸の村を舞台に、両親を亡くした5人の姉妹が祖母と叔父の支配のもとで育てられる。教育の名のもとに課される抑圧と体罰、そして叔父による性的虐待をめぐる重さが、姉妹たちの選択と結末に影を落とす。ある日、女性だけが入場できるプロサッカー観戦に抜け出した姉妹たちは、家に鉄格子が取り付けられる事態へと発展する。次女はお見合い結婚、長女は恋人と結婚、三女は虐待の果てに自ら命を絶つ。四女にも暴力が及び、祖母は結婚を強制しようとする。

10. 加藤茂

    2025年7月8日

    身をもって不自由を経験してきた女性たちが、少女たちの味方にならない理由にスカッとさせられる展開でした。洞察力に優れ、自分の道を自分で切り開こうとする強い意志を持つラーレの末っ子気質には、うんうんと頷かされます。

    5人姉妹が集まると花束のように美しく、思わず見惚れてしまいます。甘い香りが漂ってくるようで、一瞬、辛い話のことを忘れてしまいました。