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オリーヴ･キタリッジの感想＆レビュー

1. 岩立沙穂

   2025年11月3日

   原作はピュリッツァー賞受賞作品で、映画もほぼその内容を忠実に再現している。主人公のフランシス・マクドーマンやリチャード・ジェンキンスのキャラクターも、イメージ通りである。
   本を読み終え、映画を観終えた後の感想は、どちらも心に重く迫るものだった。
   オリーブの感情表現が鋭すぎて、自分の過去の未熟さを思い出させられ、苦しくなる。
   人間の（特に女性の？）持つ不寛容で狭量な側面を目の当たりにしつつも、どうしても最後まで読み進めたり、観たりせずにはいられない不思議な魅力を感じる。4話まで一気に見てしまったが、心が疲れてしまった。

2. いな

   2025年9月25日

   フランシス・マクドーマンドの舞台は圧倒的な完成度だった。実力がありすぎて、下手な人が演じれば別人になってしまうだろう。気難しさの中に確かな愛が宿る。こんな母親像は勘弁してほしい場面もあるが、それでも彼女に救われた人は確実に存在する。

   脇役陣の躍動も見事だ。ゾーイ・カザン、ジェシー・プレモンス、さらにはビル・マーレイまで。特にジェシー・プレモンスの顔立ちは役柄に強く馴染み、強い印象を残す。

3. B2mama

   2025年9月24日

   鬱を理解できない世代の方々へ。視覚と聴覚を通じて、服用薬とは異なるアプローチを試みました。この作品は丁寧に作られたドラマで、振り返ると、強盗事件の直後に息子からカウンセリングを勧められたシーンが印象的です。その夜、オリーブは記憶を消すと言い、胃薬を飲みましたが、翌日には景色を眺めながらラジオのクラシック音楽を楽しんでいる旦那を非難します。旦那からは「長い結婚生活で君は謝ったことがない」と指摘され、オリーブは大泣きします。やはり、強盗事件の後にカウンセリングを受けるべきだったと思います。ちなみに、ビル・マーレイと出会うきっかけは犬の散歩で、ラジオから流れるクラシック曲に耐えきれなかったからです。人物描写がしっかりしていて、視聴者に深く響く場面が多く、笑いに転換されるところは、役者や脚本の優れた部分です。大麻性の薬に手を出す強盗犯の本質、旦那の優しさ、妻の嫉妬、看護婦の信仰が絡み合い、夫婦の絆が試される様子が見事な脚本として描かれています。再度観ることで新たな発見があるかもしれません。”オリーブに腹が立つ”や”あんな親は毒親”という意見も耳にしますが、それは確かにそうだと思います。しかし、受け入れられることと、受け入れ難いことは別の問題です。私たちは、鬱を乗りこなす乗り物に日々乗っているようなものです。社会に適応しようと必死になってブレーキを踏んでも、事故を起こさずとも、一人で不安を抱えることになります。理想と現実のギャップに翻弄され、感情の乗り物は果たして安全運転ができているのか。正直なところ、どうするべきか分からないこともあります。他人の一面を見て理想を抱くことは、実際には一面的な理解に過ぎません。それでは他の側面を無視しているのです。このドラマを通じて、自分自身や他者を外から見つめ直すことができれば、それは一種のリハーサルのようです。さあ、現実の中でどう生きるか、少なからず学ぶ価値があると思います。

4. 山根和典

   2025年9月18日

   癇癪持ちで批判的な主人公。優しく穏やかな旦那様と対照的に、オリーヴの偏屈さが際立つ。理解しがたいキャラクターで、どこかで変化があるかと思ったが、堅物で笑顔がなくほとんど共感できなかった。こんな奥さんや、お母さんや、おばあちゃんは嫌だと思いながら見ていたけれど、最後の涙には心を打たれた。深い物語。人々は皆、寂しさを抱えている。

5. 石川哲

   2025年9月4日

   ゾーイ・カザンが出演しているから観ています。
   実力派の俳優が揃っていて、彼らが演じる姿はまるで実在しているかのように感じます。

   第1話では、正直オリーブが大嫌いで（愛してやまないゾーイ・カザンにちょっとした意地悪をする様子や、笑顔を失ったような口角の下がり具合に）もう視聴をやめようかと思ったほどです。オリーブという可愛い名前とは裏腹に、偏屈でイケズなオバサンへと成長していく様子には、どういう人生を歩んできたのか興味が湧きました。彼女が幼少期からこの性格だったのか、全話見終わった今、ぜひ「オリーブ・キタリッジ・オリジン」なんてスピンオフが欲しいと思います。

   自分の子どもやヘンリーには非常に厳しい一方で、他人には優しさを見せるオリーブの道徳観には戸惑います。ガサツさの中に繊細さもあり、人を見る目は確か。非常にバランスが崩れたキャラクターです。とはいえ、現代において確実に毒親と言えるでしょう。

   個人的には、オリーブのような人が職場や親戚にいると厄介ですが、息子の元妻への嫌がらせ（靴とイヤリングを片方だけ借りるなど）や、現妻の子どもやフラワーガールへの態度は面白いと感じました。

6. asan

   2025年8月21日

   オリーヴ・キタリッジのことは少しも好きになれないけれど、作品としては本当に素晴らしい。

   フランシス・マクドーマンドが偏屈なオリーヴを見事に演じており、
   それぞれの人の半生が濃密に描かれていることで、
   人生の重みを深く感じさせる作品になっている。

   誰もがそれぞれ抱える悩みを持ち、その隠れた部分を表現する俳優たちの繊細な演技が光る。

   優しい夫・ヘンリーがいることで、周囲とのバランスが保たれていたのだろう。

7. うび

   2025年8月15日

   オリーヴ・キタリッジは、終始嫌われ役を貫く女性なのに、なぜか憎めない。家族ならすぐに嫌悪感をむき出しにする場面でも、画面の向こうの彼女には不思議と惹きつけられてしまう。彼女は変わらず自分のまま真っすぐ生きる。ありのままを貫く姿には孤独や痛みもあるが、隣にはいつも優しい夫ヘンリーがいて、彼女を支え続ける。彼の愛情は揺らがず、ぶつかることがあっても受け入れる度量がある。第一話「薬局」のあたりは健気さが痛いほど伝わってくる。薬局で雇った若いデニースを心から支え、妻のオリーヴが彼女を厳しく叱る場面も強く印象に残る。デニースが孤独に沈むと、ヘンリーは距離を取りつつも最後まで紳士であり続ける。その姿を見ていれば、なぜ離婚に踏み切らないのか、自然と疑問が湧くのも無理はない。オリーヴが同僚オケーシーに恋をするエピソードも進むが、オケーシーが突然死してしまう瞬間、ヘンリーは彼女を責めず「出て行かないよな？」と静かに問いかける。その切なくも力強い表情は忘れられない。彼女は決して理想の人物ではないが、ヘンリーに守られ続け、今もなお愛に満ちた人生を送っていると感じさせる。バレンタインには大きなハート型の箱に詰まったチョコとメッセージカード、そして別の日には愛する妻へという手紙と花束が届く。周囲から「田舎くささ」と陰口を叩かれても、オリーヴが手作りするドレスは美しく、周囲の視線を変える力をもつ。最高の夫とは、こういう人だということを強く感じさせてくれる場面だ。オリーヴ自身もヘンリーへの愛を胸に生きているはずだが、彼の喪失をきっかけにしてもなお、彼のことを第一に考え続ける独自の想いがあふれてくる。物語は終盤へと進み、観ている間も観終わった後も、強く心に残る余韻を生む。4話相当とは思えない濃密さとドラマの数々が、印象深い場面を次々に呼び起こす。原作小説・演出・脚本・監督のどれもが素晴らしいのはもちろんだが、特筆すべきはフランシス・マクドーマンドの圧倒的な存在感だ。彼女がいなければこの役はここまで生々しく、憎らしく、それでいてリアルにはならなかっただろう。彼女の演技だけで物語の質が格段に高まる。ラストシーンから人生を遡るように過去を辿ると、さまざまな出来事が胸の奥を揺さぶり、言葉にできない感慨がこみ上がってくる。名作と呼ばれる理由がよくわかる、そんな作品だ。

8. どんぺー

   2025年8月1日

   しばらくは何も観たくないと思うほど美しい物語だった。主人公は偏屈で頑固、時に憎たらしいほどだが、それが物語の魅力をさらに引き立てている。この作品と出会えたことを心から嬉しく思う。いつか原作の小説も読んでみたい。

9. 茶漬彦

   2025年7月23日

   一人の人間の変遷を丁寧に追いながら、エピソードの連鎖が一筋縄ではいかない構成になることで、欧米文学の空気感を強く感じさせる主人公像が生まれる。主人公はいい人やヒーローではなく、少し嫌な一面もあるリアルさが際立つ。セリフだけに頼らず、関係性を描く演出がとても素敵だった。日本のドラマにも、これくらい素敵なセリフを積み重ねてほしい。

10. ザク

    2025年5月2日

    フランシス・マクドーマンド今、ここに存在感を放つ。オリーブは毒親であり、毒舌の妻でもある。そんな毒にさらされているのは、むしろオリーブ自身なのかもしれない。とはいえ、息子と夫も大変だったはずだ。第四話で、オリーブは生きることを選択した。人間としての共感力に欠ける彼女ですら、寄り添える人を求めていた。世界は尊く、そんな気持ちにさせてくれた。こんなにも良い作品に出会えた。