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ビジランテの感想＆レビュー

1. 池田祐太

   2025年10月17日

   遺産をめぐる三兄弟の運命を描くダークな人間ドラマ。田舎ならではの閉塞的な空気が、暴力と利権の絡み合う世界を強く映し出す。序盤は二郎と三郎をマトモな人間に見える場面もあるが、結局ふたりとも操り人形のような駒に過ぎない。

   二郎の妻が放つ「私がなんとかするから」という決意のセリフと、コートを脱いで会議室のドアをノックする一連の描写は、直接的でなくとも何が起きているのか容易に想像させる強い印象を残す。

   鑑賞後の後味は重くのしかかるが、桐谷健太の迫真の演技が作品の核を支えている。U-NEXTの紹介で「篠田麻里子の大胆な演技にも注目」とあるものの、濃厚な濡れ場は一瞬だけ。代わりに、画面に現れる美しい場面が印象に残る場面も多い。

   ダークな人間ドラマを求める観客には刺さる一本。

2. ゆんちゃん

   2025年10月1日

   いきなり子ども虐待の場面から始まるとは 子どもの泣き声は本当に胸が痛む。物語は序盤、それぞれの思惑が交錯しておもしろかったのに、結末のヤクザ同士の乱闘は過剰ではないかと感じた。三人の兄弟のうち誰もが納得できる解決を見いだせないまま終わるのも、もどかしい。親の酷さ、政治のどうしようもない腐敗、そしてネトウヨといった現実的な敵意を挙げるだけで、ただそれだけで死んでしまった人がいるという事実には、やりきれなさが残る。何も解決には至らなかったかもしれないけれど、せめて三人が語り合う場があればと、つい思ってしまう。血縁というものは割り切れず、ただ繋がりだけが厳然と横たわっているそんな難しさを、私は感じた。ところで、一郎がなぜあれほど土地にこだわり、公正証書を持っていたのか、もう少し詳しく知りたかった。

3. 金魚埠頭

   2025年9月21日

   田舎の闇と家父長制の呪縛を、ヤンキー漫画のノリで描きつつ社会派映画の仮面をかぶせた、血の通い合わない家族の群像劇。長男・大森南朋は地元のボス然としているが、実際は地縛霊的な存在感。次男・鈴木浩介は真面目に見えて、結局どこかズレてしまう優等生ゾンビ。そして三男・桐谷健太は東京での過ちを引きずる破壊神。この三人が揃う瞬間、まるで家族会議が地獄会議へと変わる瞬間性が圧巻だ。

   本作は田舎の閉塞感と父系の呪縛を、ヤンキー漫画のケレン味と社会派映画の切れ味で同時に描く。観客は これは家族の問題なのか、地方の問題なのか、日本社会の縮図なのか と揺れ動かされ、結局は「全部だろ」とツッコミたくなる。

   桐谷健太は歩く火薬庫と言っていい存在感で、登場するや否や何かをやらかす予感に包まれる。予感は的中し、見事に爆発的な展開で観客を煽る。大森南朋との兄弟喧嘩のシーンは、年齢を忘れた子供じみたぶつかり合いと命をかけた闘いが同居する、地元の中華屋での喧嘩と死闘の連続のようだ。

   そして結末には、ハッピーエンドの予感は全くなく、希望も救いもゼロ。見終わったあとに、実家へ戻りたくないという謎の余韻が残る。田舎の呪いと男たちの未熟さ、現代社会の閉塞感を凝縮し、血しぶきソースのように濃厚な一本に仕上がっている。地元へ帰ろうかと考える人がいたら、ぜひ止めておきたい一作だ。

4. こっちゃん

   2025年9月13日

   大森南朋はとにかく怖い（泣） どうしても見たいという気持ちがなければ、見なくてもいい。

   大森南朋がとにかく怖い。どうしても見たいという気持ちがなければ、無理して見る必要はありません。

   大森南朋、マジで怖い！（泣） どうしても見たいわけじゃなければ、見なくてもOK。

   大森南朋はとても怖い。どうしても見たいという気持ちがなければ、見なくても大丈夫です。

5. 石田彰

   2025年8月22日

   言われるほど、地方の闇は感じられなかった。
   長男が土地を手放したくない理由は、はっきりと分からなかったし、次男も普通に嫌がっていた。

6. 連装砲君

   2025年6月11日

   2025年公開の233作目、配信88作目。

   フィルマークスの観たいリストからずっと気になっていた作品。

   大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太のトリプル主演×入江悠監督によるパンチの効いたノワール作。舞台は埼玉の地方都市を想像させるが、実際には都市的な印象は薄く、町の空気感が強い。

   三兄弟を軸に、それぞれ全く違うキャラが立つ。幼い頃、暴君的な父に暴力を受けた少年時代を経て、長男の一郎は家を出て30年後、父の葬儀をきっかけに物語が動き出す。

   三郎を演じる桐谷健太の出番が最も多く、存在感が抜きんでる。一方、失踪していた長男が突然父の仕事へ復帰する展開や、家を継ぐための謎めいた動機には多くの謎が残る。

   公正証書の効力や土地の所有状況が長男に偏る設定も、なぜそうなったのか筋としては伝わりにくい。これらの要素が絡み合うが、核となる筋の根拠が薄いと感じる場面も少なくない。

   暴力と利権、思惑が絡み合うノワールだが、キャストと演技は総じて高水準。しかし、その完成度にもかかわらず腑に落ちない点が多い。

   アウトレットモール建設のため、兄が相続した土地を放棄させるよう三郎が脅される場面など、脅しの線路が直接的すぎる場面に違和感を覚える。

   弟の言い分を優先させる流れには違和感があり、死んだ祖父が満州から帰還して初めて手にした土地だという設定には説得力が薄い。

   東京育ちの筆者には、血筋の因習という側面が伝わりにくいかもしれない。二郎は頼りなく、妻・篠田麻里子の地位に寄りかかる描写も目立つ。

   総じて後味の悪さが強く、いわゆる胸糞映画として観る人を選ぶ作品。

7. 小川

   2025年5月1日

   全編を通して陰鬱な空気が漂い、その雰囲気がとても好みだった。ただ、一郎以外の二郎と三郎は意外とまともに見え、物語の荒々しさがもう少し欲しかった。3兄弟全員に個性の強さが足りず、もう少し暴れてほしかったとも感じる。話の組み立ては結構とっ散らかっており、テンポもやや悪い印象だった。3兄弟の子供時代のエピソードを、さらに掘り下げて描いてほしかった。とはいえ、般若が登場する場面は素晴らしかった。

8. 田貫

   2025年3月15日

   おもしろさ：2.0
   しんどさ：2.0

   うーん、ぜんぜんおもしろくない。オリジナルの『あん』を作った入江悠監督への期待を胸に観た分、余計に落胆が大きかった。ロジックで映画を選ぶ意味が見えない。

   しんどい邦画にありがちな「地方の暗部」感。地方に住んだことがないから、これが現実にどこまで即しているのか分からない。

   仮に地方に闇があったとして、だからといって何だろう。その事象自体には特に興味が湧かない。啓蒙する意図があるとしても、どうでもいい。

   結局見たいのは「執着」がどう描かれるかであって、その執着の理由をきちんと明らかにしてほしい。

   個人的には、ヤクザが絡むとリアリティが著しく低下する。非日常すぎて、その描写にリアリティがあるのか疑問だ。もっと日常の、日々のすぐ横にある地獄を見せてほしい。

9. 松尾智之

   2025年2月15日

   これは本当に衝撃的だ。
   地方のネガティブな側面を余すところなく描写していて、救いが見当たらない。

   正直言って、ストーリーは都会でも地方でも成立すると思う。しかし、あえて地方に設定した監督の意図には少し意地悪さを感じる。地方特有の閉塞感や陰湿さが際立っており、妙にリアルなのが良い意味で不快だ。

   最近の地方を舞台にした映画といえば「サンセット・サンライズ」だが、あれの何百万倍も面白い。

10. みやこ

    2025年1月15日

    入江悠監督の作品群の中でも上位に位置づけられる、強烈に面白い一本。長男・一郎、次男・二郎、三男・三郎の三兄弟が織りなす物語は、それぞれが抱える闇が進むにつれて露わになっていく。登場人物全員に感情移入は難しいが、ストーリーの濃密さと重さが際立ち、最高の仕上がり。特にラストのガソリンスタンドの場面は衝撃的で、観終えてからしばらく胸の内に残る。胸糞悪い作品を求める人には強くおすすめできる。#ビジランテ