美しく、気高く、切ない。これが新しいラブロマンスの形! 映画「高慢と偏見とゾンビ」試写会レビュー

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ゾンビ映画と聞くと「どうせB級ホラーでしょ?」と一笑に付す方もいるだろう。かくいう私もゾンビ好きで、特A級からZ級までいろんなゾンビ映画を観てきたクチだ。そんなことから、今回「高慢と偏見とゾンビ」がついにスクリーンで観られると聞き、いても立ってもいられず試写会に出かけた次第である。

 

ちなみに原作となった「高慢と偏見とゾンビ」とは、セス・グレアム=スミスの大ヒット小説。傑作恋愛小説「高慢と偏見」にゾンビという異質な要素を放り込みながら、原作の世界観や登場人物の魅力を損なうことなく、新たな作品に昇華させる手腕には唸るしかない。この小説を読んだ身としては、映画化のニュースをキャッチして以来、楽しみで仕方なかった。あのナタリー・ポートマンがプロデュースを務めるという話だったからなおさらだ。

 

試写会の感想を記す前に、まずはざっとストーリーを。

 

時は18世紀末。謎のウィルスの蔓延により、ここイギリスではゾンビが増え続けていた。片田舎に住むベネット家の5人姉妹は、中国で学んだカンフーを使いゾンビと戦う日々。しかし、姉妹の母親は早く娘たちを裕福な男性のもとへ嫁がせたいと気を揉んでいた。そんなある日、近所に資産家のビングリーが引っ越してきて、その友人で大富豪の騎士ダーシーも出入りするようになる。舞踏会をきっかけに惹かれあう5人姉妹の長女ジェインとビングリー。一方、姉妹の次女エリザベスはダーシーの高慢さに腹を立てながらも、なぜか彼が気になって仕方ない。ダーシーもまた、エリザベスに憎まれ口を叩きながらも、しだいに心惹かれていくのだった。そんな中、ついに人類はゾンビとの最終戦争を迎えることになり……。

 

物語の中心となるのは、5人姉妹の次女エリザベスと騎士ダーシーのラブロマンス。美人なのに「結婚より闘いの方が好き」というエリザベスは、相手が誰であろうと物怖じしない強く凛々しい女性だ。そんな彼女だから、ダーシーとやり合う時には口だけでなく手が出てしまうことも。すれ違いあり、本気の取っ組み合いあり(!)の2人の恋を、やきもきしながら応援せずにはいられない!
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多数のゾンビを相手に、ドレス姿で戦う5人姉妹。中央が次女のエリザベス。黒いドレスに彼女の芯の強さや誰に媚びることのない気高さが表れているようだ。

 

また、セットや衣装の素晴らしさにも脱帽。ドレスの裾をたくし上げて武器を仕込む場面などは、とても官能的で美しい! 気品のあるゾンビ映画というと妙な表現かもしれないが、1カット1カットがいずれも「絵になっている」のが印象的だった。

 

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ドレスアップしても対ゾンビ用の武器を必ず身につけるのが5人姉妹のお約束。

 

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ビングリーが開いた舞踏会。華やかな雰囲気と豪華な衣装にため息が出てしまう。

 

さて肝心の(!?)ゾンビについてはというと、こちらもかなり素晴らしかった。造形はもちろんのこと、大挙したり、地中から手を伸ばしたり、格子戸越しに手を伸ばしたりと、ゾンビ映画の王道ともいうべき見せ方をきっちり踏んでくれていたのがゾンビ好きとしては嬉しい。

 

恋愛映画はまず観ない人間ゆえ、「ラブロマンス×ゾンビ」と聞いて若干の不安を抱いていたが、最初の10分ですでにグイグイと引き込まれてしまった。これは本当だ。ほんの少しでも本作に興味を抱いた方は、まずは「偏見」を捨てて観にいってほしい。原作小説も非常に面白いので、こちらもぜひ!

 

高慢と偏見とゾンビ
2016年9月30日(金)より、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ 他 全国ロードショー!

 

監督/脚本:バー・スティアーズ
出演:リリー・ジェームズ/サム・ライリー/ジャック・ヒューストン/ベラ・ヒースコート/ダグラス・ブース/マット・スミス/チャールズ・ダンス/レナ・ヘディ
原作:「高慢と偏見とゾンビ」ジェイン・オースティン&セス・グレアム=スミス著
配給:ギャガ
公式サイト http://gaga.ne.jp/zombies

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